静謐にして厳粛な充実した孤独 | 酒とホラの日々。

静謐にして厳粛な充実した孤独

団地
休みの日にはヒトケのないところに出かけていくことがよくある。
一時誰もいない海岸、森の中、休日や早朝のビル街や工場地帯は
束の間の現代の遺跡、パートタイム廃墟だ。

廃れて閉鎖されたショッピングセンターや
取り壊しが決まって住民の退去した団地などは
廃墟というよりも、現代文明の抜け殻か
あるいは私たちの社会を構成していた仲間の亡骸のようでもある。
 
そんなヒトケのない何ともうら寂しい場所を、
実は私は好む。

人のいることを前提とした場所に人がまったくいない
ある意味異常な光景かもしれないが、こんな場所に
思わずほっとして和んでしまう私である。
 
人の多過ぎる東京で働き暮らしているせいもあるかもしれないが
それが原因の多くではないだろう。
たとえ地方都市や田舎で暮らしていても
私は同じことをしているのではないか。
 
厄介な他人を避けて暮らすと言うのが私の後半生の
テーマでもあるけれど、決して人が嫌いなわけではない。
ヒトケのないところで人間の痕跡や活動の気配を感じ
そこに和みや落ち着き、安心を見いだしているような
ところがある。
 
人と距離を置いて人間の営みを考えてみる。
まるで幽霊か神様のようなものだが、
人間を入れる社会の容れ物だけがあって、
でも大勢の他人という雑音のないところで
たったひとりで社会の中の自分を考えるともなく
ただ思いの赴くまま感じてみる。

こんな時間は何かに反応したり言い訳をしたり
テレビやネットの情報に流されたりする時間とは
対極にあって、世の中でただひとりあることの
この上ない充実を感じる時である。